三菱重工のMRJに関する開発資産4,000億円を消すにあたり、経済有力紙では「本来は同額の損失が計上されるのに、会計上のテクニックにより、過去最大となるべく損失が計上されなかった」との報道がありました。
まず、噛み砕きますと・・・
同社では2018年度から会計基準を日本基準から国際会計基準(IFRS International Financial Reporting Standards)に変更しています。IFRSは、グローバルな上場企業を中心に導入が進んでおり、約150社ほどが適用しています。
IFRSではのれんを償却しないなど、日本基準との違いがいくつかあります。本件では、
・将来のキャッシュフローを現在価値に置き換える「割引率」を高めに(つまり現在の価値が小さく)設定している可能性があり
・また、IFRSへの移行初年度に限り、その評価減を損失計上しない(貸借対照表で直接減額する)
という特性があります。
更に噛み砕きますと・・・
「損失計上しなくても良い1回限りのIFRS移行初年度に、大きく資産を減額しておいた」ように見えるとの報道でした。
しかし、会計基準を国際的な基準に変更したときに、会計上で発生する金額を、その年度の「損失」として一括で表示すると市場の混乱を招くことにもなります。
会計基準の変更は一瞬ですが、資産の価値は数年に渡り徐々に減額しているので、投資家向けにどうのように表示するのかは難しいところです。
同社は2017年度決算説明資料内で、具体的に「MRJ関連資産 約4,000億円の資産が目減りし、純資産も同額目減りしました」と表現しており、ベストな表示が難しいなかでベターな表示であったと感じます。