M&Aの環境 Opinion

すでに65%が「親族外」に承継

すでに親族外承継が65.7%に

これまで主流であった「親族内」への承継は、2010年代に入り、「第三者」への承継に置き換わっています。

第三者承継とは、従業員か外部の第三者のいずれかになります。しかし、従業員に承継してもらうための大きな壁が2つ存在します。その従業員に必要となる、

・経営者としての資質

・株式を取得するための資金

です。特に、成長した企業の株式を適正価格で取得するには相当な資金が必要となります。この問題を解消するうえでも、台頭する手法が「外部の第三者」への承継、つまりはM&Aでの売却です。

 

従業員様が承継するときの注意点

承継者を親族以外の役員様や従業員様としたとき、メリットとデメリットがあります。本人様との同意や準備にも一定の年月を要しますので、それらをきちんと整理したうえで、取り組んで行きましょう。

  従業員様への承継ケース 第三者の承継ケース(M&A)

従業員様の

メリット

  • 就業環境がこれまでの延長線上にあり、心理的負担が少ない
  • 多様な就業機会や登用機会を得る
  • 経営の新陳代謝を期待できる

従業員様の

デメリット

  • 承継者が株式を取得することとなり、その資金調達が難しい
  • 新陳代謝が進展せず、変貌する外部環境への対応力が乏しい
  • 経営の主体性が限定されることがある
  • 組織再編となり、心理的負担や異なる業務方法に応じる必要がある

M&Aが重要な経営戦略に

例えば、承継者が未定である従業員20名未満の企業うち、約5割が「現在、売却先を探している」「事業を継続させるためなら売却してもよい」と回答しており、M&Aへの積極性を示しています。

他方、「考えたことがない」という回答も1/3ほどもあり、これは企業継続の危機管理に対する意識の薄さを示しています。M&Aを選択しても通常3~9ヶ月程度の期間を要し、また親族内承継であっても、その選任、本人の合意、実際の就任まで概ね3年程度が必要とされます。このため、まだ意識はしていないものの、潜在的なものも含めると7~8割程度の企業が、M&Aという戦略を選択、又は選択する必要があると推察されます。

このように多くの経営者が意識するM&Aですが、これまでのようなネガティブなイメージは払しょくされ、従業員のため、取引先のため、或いは企業オーナーのセカンドライフのために、ポジティブで且つ重要な経営戦略の一つになりました。

買収側もM&Aに期待

消費者ニーズの多様化、マーケティング手法の変化、労働人口の減少などといった事業環境の変貌は日々加速しています。大企業、中小企業を問わず、単独で従来通りのビジネスが営みづらい時代に突入しました。

そこで各社が注目する手法がM&A。

  • 大企業が、中小企業の経営資源活かす「オープンイノベーション」を狙っています。
  • スピーディーな事業拡大を行うために、M&Aで「時間を買う」こともあるでしょう。
  • 事業の採算性の向上のために、買収によるスケールメリット創出も期待しています。
  • 他方、政府としても雇用環境を保全するために、廃業ではなく事業承継を促しています。

多くの企業が、それぞれの理由でM&Aに期待し、経営戦略の一つとして位置づけています。

手遅れにならないために

承継してもらえる「タイミングは限られる」

本業を遂行しながら、事業承継も検討していくのは企業オーナーにとっては大きな負担です。

しかしながら、高齢化が進む企業オーナーの体調不良、或いは家族のライフイベントは突然訪れることも少なくありません。コントロール不能の環境変化により、不本意ながら業績低迷、財政悪化、従業員の退職などが進むと、それは譲渡価格の低減、又は買収者不在となり得ることを意味します。企業オーナーの「選択肢」(親族内承継、従業員承継、外部への承継など)は、多ければ多いほど優位です。そのためにM&Aも戦略の視野に入れておくことは決して損になることはありません。

そのために! 今売らなくても「売れる企業」にしておく

企業の買収側の視点では、対象企業の財産が明確に示されていることが重要です。それは、固定資産が明示されていることに限られません。税務上の決算書だけでなく、

・部門別会計などにより、事業ごとの採算が説明できるか

・安定的な黒字が確保できているか、将来予測もしているか

・契約書類が管理されており、簿外債務の想定額が算出できるか

・株主名簿などにより、株主が明確か、或いは株の集約が進んでいるか

など、中小企業であっても企業統治を充実させていくことが、強い企業を作り上げ、またそれが未来のM&Aへの準備にもなるのです。